短編

□Girlish way of thinking
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暗闇の中、ぱちり、と、携帯を開く。
浮かび上がるのは、初期のままの待受画面。
携帯にまで女らしさの欠片もねェな、などと言われたから、見返してやれるような可愛らしい画像を見つけようと思っていたのに。
一週間かかっても、それが変わることは無かった。


味気ない画面に不意に、ちかり、と、文字が現れる。
新着メールの知らせに、軽く跳ねる心を感じて、いそいそと開いてみれば。
出会い系の紹介メール、しかも男性宛の。
誰だか知らないアンタまで、私の性を否定するのか。
だからといって、いちいち怒るのにも疲れた。
だってこれも、いつものこと。


そう言えば、今日も言われた。
可愛くねェ格好、と。
たまにはスカート履いたら、と。
でもきっと、履いていったらいったで言われる言葉は予想つく。
似合わねェな、と。
だって昔、誰かにも言われたもの。


可愛い待受にして、可愛らしいメアドにして、ヒラヒラとしたスカートさえ履いていれば女になれるのかもしれない。
欠片でも、所謂女らしさを持っていなければ、女ではないのかもしれない。
少なくとも、アナタにとっては。
それでも、何も努力するつもりになれないというのはやはり、この気持ちが恋では無いのかもしれない。


でも、やっぱり声をかけられる度に心を弾ませるのは、恋なのかもしれない。
目を合わせる勇気さえ無いのだから。
努力しないのは、どんなにくだらない小さな関係でも歪ませたくないからかもしれない。
変化が怖いから。




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