短編

□風
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ふわり、風が揺れる。
来訪者の気配。

「そこの女生徒〜、屋上で喫煙しちゃいけませ〜ん。」

「やる気ゼロな瞳の、今現在喫煙中の先生に言われたくありませ〜ん。」

「これはペロペロキャンディですぅ〜。」

千千に跳ねた銀髪を揺らしつ、眼鏡をかけた男はこちらへ歩く。
白い煙が風になびいて、標を作る。

「じゃあセンセ〜屋上じゃなかったらいいんですかぁ〜。」

「未成年者の喫煙も、先生の揚げ足を取るのも禁止ですぅ〜。」

「ちぇ〜。」

「普通口に出すかぁ?女ならなぁ、うふっごめんなさい先生、ってくらい言えよなぁ。」

「うふっごめんなさい先生、見逃して?」

「棒読みかよ。…ったく今回は知らん顔しとくから、子供はさっさと帰れ。下校時刻過ぎてンぞ。」

かしゃんと格子が鳴いて、大の男を受け止める。
白く漂う煙は、風に乗って運ばれてくる。
ふんわり匂う、大人の香り。




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