外法帖小説・陰

□行く末は君に委ねる
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「おまえは月が好きなのだな」

 そう言われ、龍斗は月から視線を外し、天戒の横顔を見た。

「この村へ来てから、月を見ている姿をよく目にする」
「本当?自分じゃ気付かなかった」

振り向いた天戒が、龍斗を見て微笑む。

「現にいつも、月の下で待ち合わせているかのようにおまえに逢う。……こうしてな」

白く柔らかな光が、天戒の端整な顔に陰影を落とし、艶やかに彩られたその姿に龍斗は目を奪われた。

「そう…、月は…好きだ。……優しくて、温かくて、まるで―――…」


……まるで、天戒みたいだから。

そんなことを言いかけて、龍斗はハッと口を噤み、慌てて顔を背けた。
赤く染まる頬が月の光に照らし出されはしないかと、心臓がドクドクと脈打つ。

「ご、ごめん。何か俺、いっつも自分のことばっかり喋り過ぎちゃって……」
「いや、良い。……おまえのことが知りたいのだ」

こちらを見つめる天戒の瞳がひどく優しくて、どうしたらいいかわからなくなる。

こんなにも鼓動が速まるのは、もはや動揺のせいだけではなくて。
苦しいほどに、胸が高鳴った。


「……俺…も…。天戒のこと、知りたい。……教えてほしい」

そう呟いた龍斗に天戒は瞠目し、しかしすぐに嬉しそうに目を細めた。

「……そうか。では、何から話すとするかな―――…」



月が、静かに傾いていく。

二人分の笑顔を包み込み、見守りながら。







お題配布元:ロマン+レトロチカ

 
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