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□廻り合い
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春になると、むやみやたらに高い
目標を立てる奴がいる。
ウチの隣にいる奴もその一人だ。
『新しいモクヒョウ?』
ウチが唯一好きな場所、
学校の屋上。
風が気持ちよく、髪と頬をかすめて行く。
ウチは今、その好きな屋上にいる。
好きな屋上のさらに楽しむ条件。
1、晴れていること
2、飲むヨーグルトがあること(イチゴ味)
次のこれが一番大事だ。
3、一人でいること
なのに、そんな事をさせるかと隣に喚いている奴が一人いる。
「今度のテストは全科目100点取るぞぉー!!」
いきなり拳を高く上げて、張り切っている。
「テストはまだまだ先だろう。それに、お前には絶対ムリだ」
ウチは隣でわめいているこいつに、冷静に言う。
「なんでぇー」
眉間に皺を寄せながら、ウチの顔を覗き込んでくる。
「なんでって、お前1年のときのテストの点数、忘れたのかよ」
お気に入りのイチゴ味の飲むヨーグルトのストローを銜えたまま言う。
「えぇっと・・・。確か・・・」
「数学20点、国語15点、理科35点、地理18点、英語なんて7点だったろ。100点満点中の半分もいってなかっただろう。そんなんで、どう取るんだ100点なんて」
なかなか言わない奴の代わりに、ウチが教科の点数を言ってやる。
「うぅぅー・・・。頑張ればできるもん」
口を尖らせながら言い返してきた。
「藍の方だってテストの点数悪かったんじゃないのぉ〜。見せてくれなかったじゃん」
肘でウチの肩を突く。
「数学100点、国語98点、理科95点、地理99点、英語94点だ。お前があまりにも可哀想になったんで見せなかったんだ」
自分のテストの点数を淡々と言い、最後になぜ見せなかったのか言った。
「数学100点って・・・」
ウチのテストの点数に驚いたのか目が点になっていた。
「お前、髪伸びたよな」
急に話をかえたウチにさらに口を開けてこいつは、は?っと言う顔をした。
「何?急に」
細い首をかしげる。
「いや、一年前は肩にもとどいてなかったから、どうやったらここまで伸びるのかなって思って」
青い髪に手を絡めて言う。
風にふかれて青い髪は海のようになびいている。
サラサラしている髪はとっても触り心地がよく、ウチは良く触っている(ウチは天然パーマだから憧れる)。
「さぁ、教室に戻ろう」
好きなだけ髪を触り満足したウチは、飲みきった飲むヨーグルトの入れ物をコンビニの袋に入れて口を縛り、立ちあがり後ろを向いて歩き出す。
「あ、ちょっと待って!」
こいつは片手に持っていたサンドイッチを一気に口の中に放り込み、飲み物で流し込んで、慌ててウチの後ろを付いてきた。