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□本の世界のもう一つの世界
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ドール祭が来てからアイの様子が変だ。
めったに子供たちと遊ばないアイが(疲れるからと言って俺に押し付ける)、日が暮れるまで遊んだりしている。
子供たちは喜んでいたが、アイは心個々に在らず、といったところだ。

どうしたんだよ・・・?

お前の悪い癖だぞ。

一人で何でも解決しようとする。

少しは俺を頼れよ。

まるで、アイツを見ているみたいだ・・・。

今日の朝も、アイは誰よりも早く起き、何処かに居ちまった。
俺も子供たちを起こさないように布団か出て、洗面所に行く。
鏡に自分の姿が映る。
なんとも情けない面をしてやがる。
鏡に手をかざし、小さい声で呟く。
「すべてを映す鏡よ、我が求めし者の姿を映せ」
そういうと、鏡は水のように揺れはじめる。
揺れが徐々に激しくなり、俺の顔は完全に見えなくなた。
しかし、その揺れもすぐに治まる。
そして揺れが治まった鏡に映る人物は俺ではなく、黒い髪の女だ。
『あら、お久しぶりね、ミック』
女は前と何一つ変わらない、色気のある笑みを俺にくれた。
「お久しぶりです、海さん。連絡しなくてすいませんでした。ここに着いてすぐに連絡しようと思ったんですが、色々忙しくて出来ませんでした」
苦笑いを浮かべて言った。
女―海は、別に怒る素振りもないまま、それは大変だったわね、と笑みを絶やさないまま言った。
『ところで、今日はどうしたの?何か私に頼み事でも?』
「はい、一つだけ」
『貴方の願い、聞きましょう』
微笑んだまま海は言った。
「今回の俺の願いは・・・、」
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