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□本の世界の出会い
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いつもどうりの朝。
いつもどうり、ミックとオレは朝食を選んでいた。
「今日は、何にするんだ?」
オレが聞くと、ミックは、ん〜、と唸った。
今日に限って子供たちもオレ達も、食べたいものが思い浮かばなかった。
しばらくの間建物と建物の間に身を隠していると、何処からか音楽が聞こえた。
陽気な音楽。
オレはこの音楽を嫌というほど知っている。
オレはミックに背を向けて走り出す。

音を頼りに待ちの中を走る。
走るどに音楽は大きくなり、オレの不愉快度も大きくなる。
薄暗い道を抜けると、大きな通りに出た。
『さぁ〜、よってらっしゃい、見てらっしゃい!年に一度のドール祭だよ〜!』
陽気な音楽に合わせて歌うように言う男の声が道に響き渡る。
『可愛い子、賢い子、元気な子、より取り見取りだよ〜!!場所と時間はここに書いてあるからね〜、見ておきな〜』
男は仮面をつけ、まるで踊るように紙をばら撒いていく。
宙を舞う紙を人々は手にとって良く。
オレも一枚手に取る。
{年に一度のドール祭!
 場所:フィート広場
 時間:10月7日24:00〜
 皆様方のご来店お待ちしており ます!!}
茶色い紙に黒い字で書いてある。
フィート広場はこの街の一番大きな広場だ。
仮面をつけた男の後に、馬車がゆっくり2台通っていく。
馬車と言っても金持ちなどが乗るような豪勢なものではない。
檻に車輪がついたようなものだ。
中には小さい子供たちが乗っている。
どの子も遠くから連れ去られたり、親に売られたりした子達だ。
ドール祭はそんな子供たちを売り買いする最低、最悪の商売だ。
今、オレたちと暮らしている子たちもドール祭でこの街に来た。
オレは馬車の中にいる子供たちを見た。
皆、ボロ雑巾みたいな服を着せられ、手首と足首には自由を奪う鉄の錠を付けさせられている。
(手錠なんてしなくったて、誰も逃げたりなんてしない・・・)
自然と顔が歪む。
ドール祭に捕まったものは誰一人として逃げようとはしない、・・・・というより、逃げようとする気力じたいがないのだ。
逃げようとする前に、性的暴力と親に売られたという事で、大体の奴が精神を犯され、自分がどうしたいのか分からなくなるのだ。
それでも中にはまだ少しながらでも逃げたいという子は居る。
一人では出来なくても誰かと一緒ならばと思う子がいる。
オレとミックはそんな子を毎年ドール祭が来るたんびに助けている。
一台目の馬車を見て、次に二台目の馬車を見た。
そこで、オレの目を引き付けて離さない奴がいた。
無造作に伸びた青い髪に、まだ低い太陽の光を受けて、まるでキラキラと輝く穏やかな海に、なびいている。
髪と同じ色の青い瞳は、一緒に乗っているものと違って、まだ生きる気力を無くしていない強い光を放っている。
女の子もオレに気が付いたのか、
見てきた。
オレと女の子はお互いが見えなくなるまで、お互いの顔を目に焼け付けるように、見詰め合った。
馬車が見えなくなっても、オレはその場に立っていた。
呆然と立っていたオレの肩に何かだ触れ、後ろに引っぱられる。
「はぁ、はぁ、いきなり、居なくなるなのな・・・。ビックリするだろうが」
オレの肩に手を乗せてた息の荒いミックが言った。
きっとオレを探して走り回っていたのだろう。
「悪い。ドール祭の音楽が聞こえたから・・・」
そういうとミックは、はぁー・・・、と大きなため息をついてオレの頭を殴った。
「ドール祭の奴に見つかったらどうすんだ。戻されるか、最悪殺されんだぞ」
怒るミックにオレは、悪い、と言ってまた謝った。
「もう、勝手にドール祭の奴に近ずかないって約束できるか?」
オレは何も言わず、頷く。
「よし、分かればよろしい」
オレの頭に手の乗せて乱暴になぜながらミックが言う。
ミックは怒った後は必ず、乱暴に撫ぜる。
乱暴と言っても痛くはない。
初めてミックに怒られ、乱暴に撫ぜられたときはただ驚かされた。
生まれて一度も怒られたり、自分に触れたものは居なかったから、ミックの行動一つ一つが、新鮮なもので嬉しかった。
「じゃ、帰るか」
オレの頭から手を離し、言った。
「ミック、先に帰ってくれ。オレ、ちょっとその辺歩いてから帰るから」
ミックは一瞬驚いたような顔をしたが、分かった、と言ってくれた。
「あんま、遅くなるなよ」
それだけ言うとミックは人ごみの中に消えていった。
オレはミックとは逆の方を向き、歩き出す。
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