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□本の世界
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「待てぇーー!!クソガキーー!!」
丸く太った白い長い帽子をかぶったオヤジが人ごみを縫うように走っている。
「誰が待つか、バァーーカッ!つぅーか、、しつけぇーーー!」
オヤジの前を走っている男の子が叫んだ。
オヤジと男の子が鬼ごっこを始めて早30分経つ。
何が理由で2人が鬼ごっこしているかというとーー。


30分前。
美味しそうな匂いが漂う市場。
昼のご飯を選ぶもの、夕方のご飯を買うもので市場はにぎわっている。
そんな中、店と店の薄暗い隙間に2つの視線が行きかう人々を見ていた。
「どの店にする?ミック」
一人の男の子がもう一人の男の子、ミックに聞いた。
「そうだな・・・、俺的にはパンが食いてぇな。チビたちも食いたいって言ってたし。アイは何か食いた物あるのか?」
アイと呼ばれた男の子は、特に無いと、答えた。
「パンならあそこが一番だぞ」
ミックが顎で指した先には、この街で一番上手いと評判のパン屋、チアフルクラウンがあった。
「どうやって盗むんだ?」
オレらにはお金は一切持っていない。
だから店から物を盗むんだ。
「普通にやろうぜ。あんだけ人いたら俺らの背だったら見えねえぇし、一個や二個取られたってわかんねぇよ」
この時、もっとちゃんとした作戦を立てればよかったのだ。
ミックのこの大雑把な作戦(でもないな)のせいで、オレはパン屋のオヤジに見つかり、追いかけられることになったのだ。


「はぁ、はぁ、確か、この辺に横道が・・・ない!?」
この前物を盗んで使った横道(家と家の間の隙間だ)はなくなり、レンガの壁が出来ていた。
「クソガキー!!待ちやがれぇーー」
かなり離していたはずのパン屋のオヤジの声が聞こえる。
(やべっ!どこか隠れるところ、隠れるところ)
辺りをキョロキョロと見渡すと、木の箱がいくつか置いてあった。
オレは急いで木の箱の蓋を取り、中に入る。
隠れていると、パン屋のオヤジが現れた。
オヤジはキョロキョロと辺りを見渡した後、どこ行きやがったんだ?あの餓鬼、と文句を言いながら着た道を戻っていった。
オヤジが見えなくなってからもしばらく隠れ、オヤジが戻ってこないか確認しながらゆっくりと箱から出る。
左足を箱からだし地面を踏みしめ、次は右足を出そうとあげた瞬間、足が箱に引っかかり大きな音をたてて倒してしまった。
オレはオヤジが戻ってこないかヒヤッとしたが、戻ってくることはなかった。
ホッと胸をなぜおろし、一歩踏み出した。
 ガリッ
「ん?なんか踏んだ」
下を見てみると、金色のブレスレットがあった。
金色の輪が2つ交差するようになっていて、緑色の玉が付いている。
(さっき、こんなの落ちてたか?)
手に取りまじまじと見ながら、自分が箱に入る前の記憶を辿ってみたが無駄だった。
逃げている中、オレはほぼ周りなんて見ていなかった。
「落ちてたんだし、持って帰っても問題ないよな?もらちゃえ!」
辺りをキョロキョロと見渡しながらオレは一人で問い、一人で答えていた。
自分の腕にブレスレットをはめて高々と上げた。
ブレスレットが太陽の光に当たり、綺麗に輝く。
(良いもん拾ったぜ)
自然と顔が緩む。
(そうだ!ミックに自慢してやろう)
そう思い立ったオレは勢い良く走り出し、ミックと持ち合わせした場所に向かった。
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