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□本の世界のもう一つの世界
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ガチャ
「!?」
洗面所の扉が勝手に開く。
「ミック!来て!」
幸が俺の手を掴んで言った。
幸はまだ10歳なのに、よく子供たちの世話をしてくれて、子供たちにとって頼れるお姉さん的存在だ。
「どうしたんだよ?」
俺が聞くと、とにかくと来て!!と手を引っぱるだけだった。
幸に引っぱられるまま玄関に行く。
「・・・なんだこれ?」
玄関には見知らぬ段ボールが置かれてあった。
恐る恐る段ボールを開けてみる。
(はぁ・・・、あの人は)
段ボールを開けてすぐに誰の仕業だか分かった。
俺たちの家の玄関に段ボールを置いていった犯人は、さっきまで俺と話していた海さんだ。
「ミック兄、どうしたの?」
幸が不安そうに聞いてくる。
「幸、大丈夫だ。さつまいもしか入ってない」
俺がさつまいもを一つ手に取り、幸に見せてやる。
幸は、なんで?、と疑問に思っているような顔をして、段ボールの中を見た。
段ボールの中にはこの家の子供たちが満足するぐらいさつまいもが入っていた。
「あ、何か入ってる」
幸がさつまいもに埋もれていた物を見つけ、取り出した。
「お手紙?」
はい、と言って幸は二つに折られている紙を俺に差し出した。
俺は紙を受け取り、広げる。
(私からの贈り物よv在り難く受け取りなさい
 あ、もちろん、タダじゃないわよv)
手紙にはそれしか書いていなかった。
あの人らしい。
閉めるところは閉めている。
(酒でも、送っておくか)
海さんに送るものを考えたついでに、このさつまいもをどうするか考えた。
「そうだ、幸。皆で家の前に枯葉を集めてくれ」
「なにするの?」
「焼き芋するぞ」
焼き芋と聞いて、幸は喜んだ。
幸の楽しそうな声で起きた子供たちが、集まってきた。
今日は焼き芋パーティーだな。
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