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□本の世界のもう一つの世界
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『それは出来ないわ』
笑みが消え、真面目な顔で海は言った。
「なぜです?」
海の答えに不服な俺は眉間に皺を寄せて聞き返した。
『貴方の願いは、貴方の観賞外だからよ』
「こん・・・」
海の言葉に食って掛かろうと俺が口を開いた瞬間、海が先に口を開いた。
『こんな事さえ叶えられなのか、と言いたそうだけど、それは貴方が望んだことよ』
俺が思っていた事を先に言われた上、昔のことをいわれたら何も言えなくなる。
『アレは確かに危険なものだわ。自分自身も、大切なものも壊してしまうかもしれない。でも、アレはあの子を選んだ。あの子も無意識でもアレを選んだ。私はその願いを叶えるしかない』
「・・・拒むことはできないんですか?」
『私に受け入れるも拒むもないわ。誰かの願いが無ければ何も出来ない』
一瞬、海の顔が泣いているように見えた。
その一瞬に俺は罪悪感を感じた。
「・・・・そうですか。無理なことを言って、すいませんでした・・・」
下を向いたまま謝った。
今は海の顔を見ることは出来ない。
海は消える前に、御免なさい、と謝って消えていった。
「そんな悲しそうな声で謝るなよ・・・」
俺は小さく、小さく言った。
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