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□本の世界
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「おっせぇな、アイの奴。何やってんだ」
階段に腰を掛けているミックがため息混じりに独り言を吐く。
アイを待ち始めて小一時間。
いい加減帰ろうかと思う。
「お〜い!ミックーー」
顔を上げると、パンを抱えて走ってくるアイの姿があった。
何故か嬉しそうに笑顔で駆け寄ってくる。
「(何かあったのか?)アイ、どんだけ待たせるきだ?捕まったかと思ったぜ」
ミックはそう言うと軽くオレの頭を叩いた。
「待たせて悪かった。意外とオヤジがしつこくてさぁ、逃げるのに手間取った」
オヤジとの鬼ごっこを思い出して苦笑いする。
「そういえばさきから気になってたんだけどよ、その腕についてるのどうしたんだ?」
ミックがオレの手首にあるブレスレットを指差した。
「あ、そうだ」
ブレスレットのことを思い出し、勢い良くミックの目の前に腕を差し出した。
「綺麗だろう〜。帰る途中で拾ったんだ」
今の俺の顔はこの上ないぐらい満面の笑みだろう。
なぜだか、このブレスレットを見つけてから、嬉しくて嬉しくてしかだがない。
「アイ、このブレスレット捨てろ」
「は?」
いきなりの捨てろ宣言に思わず聞き返してしまった。
「何で捨てなきゃいけないんだ?もしだったら金にもなるし(する気ないけど)、持ってても良いじゃねぇか」
ミックの目の前に出していた腕を引っ込めて、今度は隠すように手で押さえた。
「お前には合ってねぇよ」
「な!お前は気に入らなくても、オレは気に入ってるから良いんだよ!」
オレはそういうとミックを置いて歩き出しす。
後ろでミックのため息が聞こえた。
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