拍手ありがとうございます!
HAND in HAND
06.阿部
そういえば、隆也の私服を見るのって初めてだったかも。
静かな喫茶店でお茶をしながら、珍しい隆也を眺める。
「・・・なに」
「いや、学校着とユニフォーム以外の隆也って初めて見るなぁと思って」
「そういやそうだな」
変か?と聞いてきたので、かっこよすぎてびっくりした、と言ったら一瞬で顔を真っ赤にした。
「聞くんじゃなかった・・・・」
「隆也はわたしの私服、見たことあったっけ」
「あぁ、練習試合のときとか」
「そっか」
でも、試合見に行くときって日焼け対策とか動きやすいようにとか、機能性に気を使ってるから、あんまり可愛い服は着てない気がするんだよね。
「今日のはオレ用、だろ?」
「・・え?」
「そういう可愛いカッコ毎日してくればいいのに。似合ってる」
「・・・・・毎日、気合い、入れたら疲れちゃうよ」
「そ」
かぁっと頭のあたりが熱くなる。
してやったりという顔をされた。隆也の分際で。
「そろそろ出よっか」
「もうちょっと眺めてても良かったけど」
「慣れない台詞使わないの」
「ひでー」
通りに出て、空の確認。雨は降りそうにない。
隣に並んだ隆也もおんなじように空を見上げた。
「野球日和だな、とか思った?」
「・・・いや、今は一応デート日和で」
一応、というところは、嬉しかったから流してあげよう。
「行くぞ」
きゅっと、わたしの手を握ってから歩き出す。引かれるみたいにわたしも歩きだした。
「ねぇ隆也、もっかいデートって言ってみて」
「褒めるより恥ずいから言わねー」
じゃ、もっと褒めてよ、と言ったら、次のデートに取っとく、と呟いた。